サウジアラビア・ジェッダのキング・ファイサル専門病院研究センター(KFSH)が、Joint Commission International(JCI)の2026年世界患者安全賞の医療機関部門を受賞した。同賞の初年度にあたる年での受賞となる。対象となったのは、同院の救急搬送サービス部門が開発した「Safe Transport Evaluation Protocol(STEP)」で、高リスクなケア移行の評価手法だ。
サウジ通信(SPA)によると、KFSHジェッダは32カ国・250件以上の医療機関および各国保健当局からの応募の中から選ばれ、この部門で世界で3施設のみの受賞者の一つとなった。ジェッダ発の2026年10月11日付の発表である。
STEPは、救急搬送サービスチームが現場で観察したあるパターンから生まれた。多数の患者が、転送または退院から7日以内に救急部門へ戻ってきていたのだ。その理由として、治療の不完全さ、退院指示後に検出されなかった状態悪化、治療計画に検査結果が含まれていなかったことなどが挙げられている。
搬送を単なる物流上の手順として扱うのではなく、病院はそれを患者安全の最後の防衛線として再設計した。搬送要請のたびに、救急救命士は患者の電子医療記録を確認し、独立した臨床評価を行い、引き継ぎメモと診断結果を精査し、移動の直前に付き添い者や家族からの情報も考慮に入れる。
この取り組みの結果、救急部門への7日以内の再受診率は24%から9%へと減少した。数字が示す変化は、搬送前の確認作業が診療の質に直接影響し得ることを裏付けている。なぜ搬送という一見付随的な工程が、ここまで大きな差を生むのだろうか。それは、搬送が診療の空白地帯になりやすいからだ。
Allied Medical Servicesの責任者Hanadi Al Salmi氏は、この賞は、医療部門間の患者搬送を含め、ケアのあらゆる段階で患者安全を高めるKFSHの姿勢を反映していると説明した。関係チーム間の連携とコミュニケーションを改善することがその中核にある。
同賞は、より安全で質の高いケアの推進に優れた成果を示した米国以外の医療機関に贈られる。応募は患者安全の国際的な専門家パネルによって、革新性などの基準に照らして評価される。
KFSHジェッダにとって、今回の受賞は単なる名誉ではない。救急搬送の現場で見つかった再受診という具体的な課題に対し、記録確認、臨床評価、引き継ぎ資料の精査、家族への聞き取りを組み合わせた手順を構築した点が評価されたことになる。搬送要請のたびに同じ確認を繰り返す運用は、現場の負担を増やすようにも見えるが、再受診率の低下はその負担を上回る成果を示している。
受賞部門が「医療機関部門」であることも重要だ。国境を越えた応募が集まる中で、ジェッダの病院が世界3施設の一つに入ったことは、サウジアラビアの医療機関が国際的な患者安全の議論で存在感を示したことを意味する。32カ国という応募の広がりを踏まえれば、評価の目はもはや欧米の機関だけに向いているわけではない。
STEPの特徴は、搬送直前の情報収集にある。電子医療記録の確認だけでなく、救急救命士による独立した臨床評価、引き継ぎメモと診断結果の精査、そして付き添い者や家族からの聞き取りが組み合わされる。患者本人が語れない状況でも、周囲の情報が状態悪化の兆候を捉える手がかりになり得るという考え方が背景にある。
7日以内の再受診率が24%から9%へ下がったことは、退院や転送の時点で見落とされていた要素が相当数あったことを示唆する。治療の不完全さ、退院指示後の悪化、検査結果の未反映という三つの理由は、いずれも搬送前の確認で補える種類のものだ。搬送を「最後の防衛線」と位置づけた再設計は、こうした見落としを減らす方向に働いたと考えられる。
Hanadi Al Salmi氏の発言は、受賞が特定部門の功績にとどまらず、医療部門間の搬送を含むケア全体の安全を高める取り組みの延長にあることを示している。連携とコミュニケーションの改善という言葉は抽象的だが、STEPの手順はそれを具体的な行動に落とし込んでいる。誰が、いつ、何を確認するのかが明確になれば、引き継ぎの抜け落ちは減る。
JCIの世界患者安全賞は初年度の開催であり、KFSHジェッダはその最初の受賞者の一つとして名を連ねたことになる。応募総数250件以上、対象32カ国という規模を考えれば、選考は狭き門だった。医療機関部門で世界3施設という枠は、受賞の重みを測る一つの目安になる。
評価基準に革新性が含まれる点も、STEPの性格と合っている。新しい機器や治療法ではなく、既存の搬送工程を組み替えた点が革新と見なされた。大規模な設備投資ではなく、手順と役割の再定義によって成果を出した事例として受け止められる。
救急部門への再受診は、患者本人にとって負担であるだけでなく、医療機関にとっても資源の再配分を迫る。7日以内という短期間での戻りは、初回の診療が完結していなかった可能性を示す。STEPが狙ったのはまさにこの点であり、搬送前の確認を徹底することで初回診療の質を底上げしようとした。
救急救命士が独立した臨床評価を行うという設計は、搬送を依頼した側の判断をそのまま受け取らないことを意味する。二重の目で確認する仕組みは、単一のチームでは気づけない変化を拾う可能性を高める。付き添い者や家族への聞き取りも、同じ目的に沿った情報源だ。
KFSHジェッダの受賞は、サウジアラビア国内の他の医療機関にとっても参照点になる。搬送手順の見直しは、特別な予算を必要としない改善であり、再受診率という測定可能な指標で成果を確認できる。24%から9%という変化は、その説得力を支える数字だ。
SPAの発表は、受賞の事実、応募規模、STEPの内容、再受診率の変化、Hanadi Al Salmi氏のコメント、賞の対象と評価基準を伝えている。一方で、STEPの導入時期、対象患者数、他施設への展開状況、搬送件数の推移、受賞式の日程や場所については触れていない。これらの点は今後の発表を待つ必要がある。
KFSHジェッダはどの賞を、どの取り組みで受賞したのか。 Joint Commission International(JCI)の2026年世界患者安全賞の医療機関部門を、救急搬送サービス部門が開発したSafe Transport Evaluation Protocol(STEP)で受賞した。高リスクなケア移行の評価手法が対象となった。
応募規模と受賞枠はどの程度だったのか。 32カ国・250件以上の医療機関および各国保健当局の応募があり、KFSHジェッダはこの部門で世界3施設のみの受賞者の一つとなった。2026年は同賞の初年度にあたる。
STEPはどのような課題から生まれたのか。 救急搬送サービスチームが、転送や退院から7日以内に救急部門へ戻る患者が多いことを現場で観察した。治療の不完全さ、退院指示後に検出されなかった悪化、治療計画への検査結果の未反映が理由として挙げられている。
STEPでは搬送時に何が行われるのか。 搬送要請のたびに、救急救命士が電子医療記録を確認し、独立した臨床評価を行い、引き継ぎメモと診断結果を精査し、移動直前に付き添い者や家族からの情報も考慮に入れる。
再受診率にどのような変化があったのか。 救急部門への7日以内の再受診率は24%から9%へ減少した。搬送を単なる物流上の手順ではなく、患者安全の最後の防衛線として再設計した結果とされる。
賞の対象と評価はどのように行われるのか。 米国以外の医療機関で、より安全で質の高いケアの推進に優れた成果を示した組織に贈られる。応募は患者安全の国際的な専門家パネルが、革新性などの基準に照らして評価する。